大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2680号 判決

控訴人

佐藤重美

右訴訟代理人弁護士

中島通子

秋田瑞枝

被控訴人(引受参加人)

鈴木義通

右訴訟代理人弁護士

高橋一郎

井元義久

一審脱退被告

鈴木義隆

右当事者間の雇傭関係存在確認等請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。控訴人が被控訴人に対し、労働契約上の権利を有することを確認する。被控訴人は控訴人に対し、昭和四六年七月から一か月四〇、五〇〇円の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、次に付加するほか、原判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する(ただし、一二枚目裏五行目に「原告ら右行為」とあるのを「控訴人らの右行為」と、一三枚目裏一〇行目に「指定」とあるのを「指名」と、一七枚目表一〇行目に「前記1」とあるのを「前記(1)」とそれぞれ改める。)。

《証拠関係略》

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきであると認定判断するものであるが、その理由は、次に訂正・付加するほか、原判決の理由と同じであるから、その説示を引用する。(証拠略)の存在は、当裁判所の右認定判断の妨げとなるものではない。

(一)  原判決二三枚目表七行目の「乙第三号証」の次に「当審における控訴人本人尋問の結果により成立が認められる甲第四七号証」と加え、同八行目の「原告」を「原審及び当審における控訴人」と改め、同枚目裏六、七行目の2項の全文を削除し、同八行目の番号「3」を「2」に、同九、一〇行目に「読者に」とあるのを「読者の値上げ反対の消費者運動に同調し」と、二四枚目表五行目の番号「4」を「3」に、同八行目に「夕刊時」とあるのを「朝夕刊時」とそれぞれ改め、同枚目裏初行の終りに続けて「なお、控訴人はこの点につき、被控訴人店舗では、店員同志が休日希望日を自主的に調整して休日予定表に記入し、特段木村主任の許諾を得ないで休日をとっていた旨主張するのであるが、(証拠略)によると、被控訴人店舗では昭和四六年五月当時、各店員の休暇は一か月二回(二日)の範囲内でとる慣例になっていて、店員が休暇をとる場合木村主任の許可を得る建前になっていたのであるが、各店員は、右回数の範囲内においてはそれぞれ自己が休暇をとった場合の業務上の支障の有無を考慮しつつ自主的に調整したうえ、店内に掲示してある休暇予定表に自己の名を記入して休暇をとっていたため、木村主任はその限りにおいては殊更、口をはさむ必要を見なかったこと、しかるに控訴人は、同月二四日まで、二回の休暇を消化済みであったのにかかわらず、そのころから一週間に一回休む権利があると主張し、同月二九日の朝夕刊時、同月三〇日の朝刊時及び同月三一日の夕刊時に単に休日予定表に自己の名を記入したのみで木村主任の許可を得ることなく休んだものであることが認められるから、それは被控訴人主張のとおり、いずれも無断欠勤であると認めるのが相当である。」と加え、同二行目の「原告」を「原審及び当審における控訴人」と改め、同三行目の次に新たに行を起こして「(人証略)によると、控訴人は、木村主任や従業員の面前で「配達が遅れるようならば新聞を入れないできてしまえ。」といったことを認めるに難くなく、それは、新聞販売店の従業員の発言としては不謹慎であると非難されてもやむをえないともいえるが、右発言がいかなる時の、いかなる状況の下になされたかにつき、これを認めることのできる証拠はないから、右発言のみから控訴人の勤務成績が不良であると評価するのは早計である。」と加える。

(二)  二五枚目裏初行の「原告」を「原審および当審における控訴人」と改め、同六行目の「一、」の次に「第一五、」と加え、二六枚目表二、三行目に「四月四日」とあるのを「三月下旬」と、同四、五行目に「従業員一四名中九名をもって従業員会議を結成した。」とあるのを「他の従業員に呼びかけて闘争態勢に入ったが、この態勢下に入った九名の従業員の集りを四月一〇日、従業員会議と称した。」とそれぞれ改め、同枚目裏九行目の終りに続けて「なお、控訴人はこの点につき、従業員会議は決して一時的な集団ではなく、昭和四四年末ごろ、当時の店員の神田らによって店員会議という名称の組織が作られ、労働条件の維持・改善につき店側と恒常的に交渉を継続してきたところ、控訴人らが昭和四六年四月一〇日、これを従業員会議と名称を変更し、店内労働組合として昭和四九年夏ころまで存続した旨主張するのであるが、当審における控訴人本人尋問の結果によると、なるほど被控訴人店舗では昭和四四年末ころ、当時の店員神田を中心とする店員の一部が労働条件の改善を求めて要求事項を掲げ、店側と交渉を持っていたことを認めるに難くないが、それが規約を有し、代表者や執行機関を定めて運営されていたことを認めることのできる証拠はなく、従って、それが昭和四六年四月一〇日、控訴人らによって従業員会議と称せられ活動を始めたとしても、その組織の程度や活動の状況が前記認定のとおりである以上、右従業員会議は、労働者が集合して行動する集団とはいい得ても、労働者が組織した団体というには足りず、労働組合法二条にいう労働組合であるとは未だ認め難い。」と、二七枚目裏末行の終りに続けて「なるほど控訴人が主張するように、発行本社からの新聞の遅着、天候・交通状態、従業員の退職・病気等による故障等によって、一時間程度の遅配が日常的に起こり得ることはこれを否定することはできないが、これらによる遅配はいわば相当な理由による遅配であって、もとより従業員の違法な行為による遅配とは同一視できないから、一時間程度の遅配が常に起こり得ることの故をもって、控訴人らの違法な行為による遅配を軽視することは許されない。」とそれぞれ加える。

(三)  二九枚目表三行目に「三万二、五〇〇円」とあるのを「三万一、五〇〇円」と改め、同枚目裏二行目の「認められる」の次に「(この点の認定に反する当審における控訴人本人尋問の結果は採用することができない。)」と加え、同七行目に「過ぎず」とあるのを「過ぎないばかりか、新聞販売店の従業員としてはその業務の性質上甘受すべき程度の負担増と考えられ、」と改め、同一〇行目の「木村」から三〇枚目表初行の終りまでの全文を「(人証略)によると、代配要員の選任基準としては、読者の信頼が比較的薄いこと、区域管理が余り得意でないこと、経験が長く配達に慣れていることなどが考えられるところ、木村主任はそのころ、控訴人らから強く実施を求められていた週休制実施を目指して更に代配要員を増員すべく、区域担当の従業員の中から右の選任基準に照らして、入店が比較的古くて地理に明るい控訴人を代配要員に指名したものであることが認められるから、右指名は、もとより相当な裁量であるというべく、その範囲を著しく逸脱したものとはとうてい認め難い。」と、三〇枚目表七行目の「原告」を「原審及び当審における控訴人」とそれぞれ改め、同行目の「原告は」の次に「右代配業務に就くことを拒否したうえ、」と加え、同八行目に「称して、従来の」とあるのを「称し、従来の区域担当に就く意欲を表明する手段としての示威行為として、」と改め、同八、九行目の「配達員に」の次に「「自分に配らせろ」などと言いながら」と、同末行の冒頭に「成立に争いのない乙第二号証の一ないし六」とそれぞれ加え、同枚目裏三行目に「次の事実」とあるのを「控訴人は右就労闘争中、次のように配達業務を妨害したこと」と、同四行目に「六月八日」とあるのを「六月九日」と、同八、九行目に「同月七日夕刊時から同月一一日朝刊時までの間において」とあるのを「同月一一日朝刊時」とそれぞれ改め、三一枚目表九行目の「配達員」の次に「及び控訴人の配達妨害行為を警戒中の被控訴人店舗の支援者」と加え、同枚目裏初行に「原告」とあるのを「原審及び当審における控訴人」と、同六行目から三二枚目表三行目までの4項の全文を「控訴人は、控訴人が代配業務命令を拒否し五区担当の配達員を追尾して就労の意欲を表明したのは正当な就労闘争である旨主張する。しかし、前記のとおり本件代配業務命令には違法性が認められない以上、控訴人はこれに従うべき義務があるといわねばならず、たといそれに不服であっても、その表明は専ら木村主任や店主に対する平和的交渉に委ねるべきであり、その方法によることなく、右命令を拒否したうえ、配達中の従業員(それは本来、交渉の相手方でも、また交渉の場でもあり得ない。)を追尾し「配達させろ。」などと示威することが正当化されるいわれはなく、いわんやその配達員から配達中の新聞を抜き取ったり、また公衆の面前で右配達員を中傷するようなことが許されるものではない。なお、(証拠略)によると、全臨労は昭和四六年六月八日、一審脱退被告に対し、控訴人らに対する代配要員指名の撤回等を求めて団体交渉を申入れたところ、同被告はこれに応じ同月一一日、団体交渉を行なったこと、しかし当日の交渉においては、従業員側が一三日まで一切の争議行為を中止し、店側はその間の控訴人に対する代配業務命令を一時棚上げして控訴人は従来の五区の配達業務を担当することという話合いが成立したものの、同月一四日以降については確たる取決めもないまま経過し、同月一三日、木村主任は全臨労に対し、控訴人に対する代配要員指名を改めて確認したことが認められ、右認定に反する(人証略)は採用しない。右認定事実によると、六月一一日の団体交渉において、店側が控訴人を同月一三日まで従前の担当区域の配達業務に就かせたのは一時的な措置であって、控訴人に対する代配要員指名を撤回する趣旨ではなく、また同月一四日以降について交渉を継続するとの確たる取決めもなかったことが認められるから、右団体交渉において成立した事項は、木村主任が、同月三日の控訴人に対する代配要員指名に基づき、同月一四日以降代配業務命令を発するための支障となるものではない。」と改める。

(四)  三二枚目裏八、九行目に「が、参加人の通報により来合わせた警察官により停車を命ぜられた」とあるのを削除する。

(五)  三三枚目裏末行に「立ち戻らざるをえないから、」とあるのを「立ち戻らざるをえず、以上の認定事実によると、本件解雇が濫用にわたるものとはとうてい認められないから、」と改める。

(六)  三五枚目裏一〇行目の冒頭から三六枚目表七行目の終りまでの全文を「次に、(証拠略)によると、全臨労が本件紛争に表立って関与するようになってきたのは、全臨労がその名において六月八日、一審脱退被告に対し、団体交渉の申入れをしてからであるが、(人証略)によると、木村主任は、それ以前から全臨労の存在を知っており、更に従業員の何人かがそれに加入していたことをも知っていたことが認められるところ、既に認定のとおり、控訴人、長津静雄、古田春芳、宮里悟吉は昭和四六年春闘にあたり、従業員九名の中心となって従業員会議を結成したうえ、賃上げ、週休完全実施等を要求して木村主任との間で四月に三回、五月には三、四日に一回ずつ交渉を続け、その間腕章・ゼッケン闘争も実施し(交渉回数・腕章・ゼッケン闘争については、〈人証略〉によってこれを認める。)、更に六月二日の交渉においては店側の誠意がみられないとして翌三日、指名ストライキを実行するなどその要求を貫徹するため、長期間積極的、粘り強く行動し、しかも控訴人がその中心的役割を果たしている点にかんがみると、木村主任は、控訴人が全臨労の影響の下にこれらの行動に及んでいるものと判断していたことはほゞ間違いないといい得るのであるが、しかし前記二に認定した解雇理由たる行為の態様、その情状に照らすと、店側が、控訴人が全臨労所属組合員であることを嫌悪し、本件紛争において中心的役割を果たした控訴人を排除しようとしたのが本件解雇の真の理由であると認めるのは相当でない。」と改める。

(七)  三六枚目裏初行に「同月八」とあるのを「同月九」と改め、三七枚目表四行目の「支援者の」の次に「知人の」と、三八枚目裏二行目の「従業員会議」の次に「の」とそれぞれ加え、同三行目の「木村主任の指示によるものか、」から同六行目の終りまでの全文を「木村主任の指示によるのか否かにつきこれを明らかにする証拠はないものの、こと従業員の食事に関する以上、責任者たる木村主任の少なくとも暗黙の了解の下になされたものと推認するのが相当であるが、紛争の最中の混乱した状況下で、一時的に右の程度の異なる取扱いがなされたとしても(弁論の全趣旨によると、当時、被控訴人店舗では従業員の給料から食費分として六、〇〇〇円を差引いていたので、右二〇〇円はその一日分を返還する趣旨であることが認められる。)、その事実から被控訴人の不当労働行為意思を確認するのは相当でない。」と改め、三九枚目表初行の終りに続けて「右認定に反する当審証人鈴木将司の証言は採用できない。」と加える。

(八)  三九枚目表六、七行目に「指名スト及びピケ」とあるのを「坐り込み行為」と改める。

(九)  三九枚目裏末行に「三の(三)」とあるのを「二の(四)に」と改める。

二  以上の次第であるから、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 裁判官 丹野益男)

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